12月8日 被爆ということ 「朽ちていった命」 [日々の記録]
数学、微分積分。センター数学ⅠA。
英語、長文、リスニング、音読、英単語。
センター地理。
物理、電磁気。
センター国語。
センター国語、河合塾の全統マークの問題を解いた。寒気がするぐらい怖い評論文を読んでいて「朽ちていった命」という本を思い出したので紹介します。春からずっと紹介しようと思いながら、その文が書けませんでした。そこで幸運にも問題文を読んでいて私がなんとなく言いたかったこと、本の内容にぴったりの文章が見つかったので引用します。
以下模試問題の引用。
核分裂で発生する放射能は、人間にこれまでほとんど未経験だった崩壊を引き起こす。そのことをわれわれはヒロシマとナガサキで漠然と知ったが、未曾有の惨事と混乱のなかでことの実相はまだ明確にはわからなかった。それがはっきりとみえたのはだいぶ経ってからのことだ。チェルノブイリの原発事故や東海村臨界事故は、戦争中ではなく平時の日常に起こった。そのときわれわれは、映像に残されたチェルノブイリの消防士の姿や、東海村事故の犠牲者の様子などから、人は放射能によって、死ぬというよりもむしろ内部から壊されるのだということを知った。死ぬというのは、事故であれ病気であれ、生存のプロセスの果てに訪れる命の終わりである。だが放射能は、生命体を作っている細胞、それを作っている分子を物理的に破壊し、組織を崩壊させてゆく。つまり、放射能によって人間は、内奥から「壊れる」という終わりを経験するようになったのだ。<自然>の体力を前提にして治療を目指す医学が、これに対してまったく無力だというのも当然のことである。この事態への対処は「治療」という医学の努めの範疇には入らない。
問題の出典は西谷修「生命科学とサイバネティクス」(雑誌「UP」2008年5月号)。サイバネティクスのの理論によって遺伝子工学の技術が、人間の見方を根本的に変容させているいった気味の悪い文章。(引用していて思ったのだが「放射能」ではなく「放射線」ではないか)
さて、「朽ちていった命」は東海村の臨界事故で被曝されたO氏の治療の記録が客観的に坦々と書かれています。事故については「東海村JCO臨界事故」 (wikipedia リンク)。
私はこの本を読むまで放射線や核の本を読む中で放射線の恐ろしさはなんとなく分かっているつもりでした。しかし、この本を読んであらためて放射線の怖さを知りました。
O氏の被爆した線量は致死量をはるかに超えていました。しかし、病院に運ばれたときは意識もはっきりとし、右手が少しはれているだけで普通の人と変わりがないように見え、これだったら助かるのではないかと看護師や医師はそのとき思ったそうです。だけれども、大量の放射線を浴びたからだはDNAまで破壊しつくされもう細胞自体再生されないという状況でした。本にはばらばらに破壊された染色体の写真が載せられています。
あれだけの線量を受けた人間を現代の最高の医療技術を駆使すれば助かるのではないかと考えたその医師には正直驚きあきれました。どう考えても助かりません。あまり被爆治療について教育をされなかったのでしょうか(担当した主任医師は被爆治療の専門ではなかった)。おそらく今はしっかりとしたこの種の医学教育がなされていると思いますが・・・。
被爆する恐ろしさがわかるとても貴重な本だと思います。命や医療についていやおうなく考えさせられます。
最後に注意ですが、受験生は今勉強の合間とかに読まないほうが良いです(もう本を読む暇もない時期ですが)。というより読まないください。おそらく数日間勉強が手がつかなくなります。あと少々ショッキングな写真がありので小さい子供には注意してください。
ちょうど、ミノ~+さんがこの記事を書かれている頃に、「東海村臨界事故への道」を読みました。私にとっては、第4章、中でも横川豊さんにインタビューした内容が一番こころに残るものでした。「被曝治療83日間の記録」(朽ちていった命)は何度も読みかえしました。みんなに読んでもらいたいと思っています。
by m (2010-12-15 21:28)
mさん、コメントありがとうございます。
「東海村臨界事故への道」、またこういった問題を考えることがあるでしょうから、そのとき読んでみますね。
私もこの事故のことはみんなに知ってもらいたいと考えています。
by ミノ〜+ (2010-12-15 22:50)